ぼーっとしたり、物事を計画的に進められなくなったり、約束を忘れたり・・・
仕事だけでなく、性格も怒りっぽくなって対人関係も上手くいかなくなったり
そんな、生活の様々な場面でトラブルを起こしてしまう高次脳機能障害。
高次脳機能障害を見逃さないための特徴や対処法を、慶応義塾大学 三村 將 教授のコメントともに紹介します。
「高次脳機能」ってなに?
いろいろなことに注意を払う・物事を記憶する・考える・判断する、といった人間ならではの高度な脳の働きを「高次脳機能」といいます。
脳の病気や、頭をぶつけるといった外的要因によって脳が傷つき、これらの機能が損なわれた状態の総称が「高次脳機能障害」です。
麻痺によって体が動かなくなったり、呂律が回らなくなったりするのと異なり、外見からは分かりづらいのが高次脳機能障害。
そのため『見えない障害』とも呼ばれています。
時間が経ってから気づかれることも多く、時には、くも膜下出血から回復して6か月経過してから症状が見つかることも。
高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害の原因としては、大きく分けて脳卒中、外傷性脳損傷、低酸素症などがあります。
脳卒中としては、動脈瘤の破裂に伴う、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血などがあげられます。
また、外傷性脳損傷とは頭部を強く打撲することによって起きる症状。
交通事故やスポーツ、その他日常生活での転倒や転落が原因となります。
高次脳機能障害に見られる症状
高次脳機能障害の症状で、特に生活に支障が出やすいのが脳の前頭葉の障害によって起きる症状。
代表的な症状を見ていきましょう。
・注意障害
ぼーっとしたり、ちょっとしたことで気が散ったり、日常生活では火を消し忘れる、といった症状があれば要注意です。
・記憶障害
約束を忘れたり、昨日のことを思い出せなくなったり、物事を覚えられなくなる症状です。
・遂行機能障害
仕事を計画的にこなせなくなったり、複数のことの優先順位をつけられなくなったり、
物事を段取りよく進めることが困難になります。
・社会的行動障害
怒りっぽくなったり、意欲が低下したり、また自分の障害に自覚がなかったり、相手の気持ちが分からないなど。
対人関係のトラブルを起こしやすくなります。
こうした症状が、鬱やひきこもりの原因になってしまうこともあります。
高次脳機能障害が疑われる場合の受診先は?
高次脳機能障害が疑われる場合、
もともと病気や怪我の時に受診した医療機関で診察してくれることもありますが、実際には対応しきれない場合もあるそうです。
相談先としては、「国立障害者リハビリテーションセンター」や「日本高次脳機能障害学会」のホームページに挙げられている、
全国の相談窓口や役員のリストを参考にすると良いそうです。
高次脳機能障害の診断方法
高次脳機能障害を診断する際のポイントは、大きく分けて3つ。
①.症状
脳の部位ごとに、損傷によって発生しやすい症状が分かっています。
注意障害・記憶障害といった症状と損傷を照らし合わせます。
②.脳の検査
MRIやCT、脳血流SPECTで脳の損傷を確認します。
③.神経心理学的検査
注意・記憶・ものの考え方などを検査します。
先天的な障害のない人に、頭部の怪我をきっかけに症状があらわれたり
また、認知症などと異なり症状が進行性でないことが診断のポイントになります。
高次脳機能障害の治療方法
高次脳機能障害と診断された場合、治療の中心になるのが『認知リハビリテーション』です。
リハビリは、患者さんの損傷部位に合ったやり方で、残った脳の機能を活かす方向で行われます。
また、認知行動療法が使われることもあります。
認知行動療法は、元々うつ病や不安症といった精神疾患に適用される治療法です。
イライラや不安といった心の症状は、貧乏ゆすりや動悸といった体の症状へ、
さらには意味なく歩き回ったり何もしないといった行動へ繋がります。
認知治療療法は、行動を変えることで、体の症状、さらには心の症状を緩和させることに特徴があります。
最近では様々な範囲で応用されているそうです。